【娘への手紙】信者になるのか、思考するのか。

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きれいな図書館ですね。

あなたの大学に、寄付金がたくさん集まったそうですね。

勉強する環境の大切さを知っている人たちが多いことは、素晴らしいことです。

どんな場所で、誰と過ごすのか。

心に与える影響は大きいと感じます。

 

優れた頭脳が集まる場所で、若いあなたが多くの時間を過ごすことを、私はいつも願っていました。

思考することを喜びとする人の中で過ごす時間は、何事にも代えがたい経験となるでしょう。

「なぜ、そうなるのか」

「なぜ、そうでなければいけないのか」

疑問と理由を考える習慣をつけること。

人は考えることで、世界の中にいる自分の姿を、発見していくのです。

 

これは、アートを学ぶ上でも、大切な態度です。

アートは、感情に飲み込まれた、感傷的なものではないのですよ。

 

「この絵は素晴らしい」と、暗記するものでもないのです。

思考するものなのです。

 

アートの潮流の転換は常に、前時代の価値観の転覆によって行われてきました。

どの時代でも、暗記するように、様式通りに作品を作り続けるアーティストがいる一方で、それに疑問を持つ人が出てくるのです。

「なぜ影を描かないのだろう」

「なぜ絵の中の視点は1つなのだろう」

「なぜ額縁が必要なのだろう」

「なぜ美術館に飾っているのだろう」

その当時の、当たり前を、暗記してしまわないで、「なぜそうなのだろう?」と考える人たちがいました。

そういうアーティストたちは、多くのテキストを残しています。

彼らが感情的な理由で、踏襲されてきた様式を無効化したのではないことが分かります。

 

アートの歴史は、思考する人たちによって、ここまで進んできました。

今でも、そうです。

ほとんどの日本人は、大学へ行って、アート作品の作り方、アーティストになる方法を暗記します。

これが悪いわけではありません。

ですが、一生涯その枠から出ることなく、延々と同じ作品を作り続ける人、同じ展覧会に出品する人たちが、圧倒的多数です。

安定した評価を得ることが、アートに関わる動機となってしまうからかもしれません。

今いる世界を変えたいとは、思わなくなるのです。

思考すると、世界は変わってしまいます。

変化を恐れるアーティストは、前時代の教えの盲目的な信者でいることを選ぶのです。

 

いつの時代も、自分たちの頭で考える人たちが、新しい世界を作り続けています。

あなたの考えたことを、大事にしてください。

思考する仲間が存在する場所にいるのですから。