【娘への手紙】大和絵と漢画の盲点

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これは、新しく建った寮の写真ですね。

寄付金がたくさん集まったと言っていましたね。

これはきっと、お披露目ツアーの様子ですね。

こんな素晴らしい部屋で勉強したら、魔法使いにでもなれそうです。

 

絵画の陰影について、もう少し話しましょう。

なぜ日本の絵画では、光と影を描かなかったのか。

それは、渡来してきた絵画の影響も大きいでしょう。

日本では、平安時代の源氏物語絵巻に描かれるような、「大和絵」と呼ばれる絵画の様式と、江戸時代に一世を風靡した狩野派のように、中国から渡来した絵画から影響を受けた「漢画」の様式があります。

絵巻にも、大和絵と漢画があるのですよ。

墨で水墨画調に描かれているものは、漢画に分類します。

 

大和絵、漢画の双方とも、濃淡は描かれることがありますが、西洋絵画に見るような、光と影による表現はありません。

そのことについて、私はある考えを持っています。

「漢画への、宗教的とも言える憧憬が、日本絵画から陰影を長く消し去っていた」と。

 

なぜならば、漢画は、非常に珍重されていたのです。

絵師の勉強するテキストになる中国の絵画は、舶来品です。

荒波のなか、船で渡ってきたものです。

あの当時の舶来品は、お宝ですよ。

高級品ですから、もちろん権力者が所有していました。

絵師であっても、簡単に見ることの出来る品ではなかったのです。

 

その貴重な絵画の様式を破る発想をすることは、なかなか難しかったのではないかと想像しています。

下っ端の絵師には、模写くらいしか、見ることを許されなかったのではないでしょうか。

私たちでも、もしもメディアが制限されていて、アニメを5年に1度しかオリジナルで見ることが出来ず、あとは質の悪い、小さな画像しか見ることが出来なかったら、どうでしょうか?

新しいアニメを作り出すことよりも、なんとか真似をして、少しでも本物に近づきたいと願うのではないでしょうか。

当時の絵師は、実生活で影を見ていても、「なぜ絵画で、地面に人の影を描かないのだろう?」という疑問を持つことすら、なかったかもしれません。

 

そういう「盲点」にも似たようなことは、サイエンスの世界でも、あったでしょうね。

日本の絵師に、陰影を描く技術がなかったわけでも、陰影に気づく能力がなかったわけでもありません。

平安時代の仏画の隈取りの技術は、陰影を描くのと、同じ要領です。

それ以上に、金彩の繊細な線描の超絶技術に、見惚れてしまうのですが。

 

陰影の問題だけを取り上げると、「能力がないから、出来なかった」という歴史観を持ってしまいそうですね。

盲点は、いたるところに隠れてそうですね。