【娘への手紙】料理の絵

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あなたの幸せそうな顔が浮かぶ写真だわね。

最近は研究が忙しかったみたいだから、さぞ美味しかったでしょう。

 

食べ物の写真を見ながら、料理を描いた絵画について、考えていました。

料理そのものが描いてあるものは、古い日本の絵画では、少ないのよ。

思いつくところでは、大正から昭和にかけて活躍した日本画家の前田青邨が、お膳が部屋にある様子を描いていました。

それ以外は、絵巻や浮世絵の、食事風景の中に描かれています。

食材は、日本画でも、枇杷や檸檬、鯛に鰻など、多く描かれていますね。

京都に住んでいると、夏は、鮎を描きたくなります。

魚の青々しい新鮮な様子を描くには、色の発色が良くないといけないので、洗練した筆使いが求められます。

料理以上に、美味しそうには、なかなか描けないわね。

絵画教室でも、「料理を描きたいです」という人は、まだ少ないですよ。

 

出来上がった料理を、メディアで公開するメンタリティーは、海外からのものだと感じます。

「ディスプレイ」を作る精神です。

欧米のお店のショーウィンドウに並んだ、ケーキ、パン、ハム・・・あの豊潤な快楽への誘いを、なかなか無視できませんね。

つい立ち止まってしまいます。

SNSに食事の写真をアップする人も、自分が食べたことを、自慢したい人だけではないでしょう。

例えば、毎月寄せていただく、京都「キメラ」の料理は、お皿を基底材に使った絵画、まるでアート作品です。

シェフは食材を使った画家です。

一刻一刻と味や温度が変わってしまうので、急いでいただきますが、まるで絵を食べているように感じます。

 

いまの時代に、大正、昭和の画家たちが生きていたら、料理の絵は増えたかしら?

そんなことを想像していると、この先も、次々と展開されるメディアの活用によって、新しいモチーフが誕生してくる予感がします。