【娘への手紙】尾形光琳の《燕子花図》屏風

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そちらは、やっと桜が咲いたようですね。

アメリカから遊びにいらしたJimさんが、「NY の近くはまだ寒い」と仰っていました。

京都は花の季節が終わり、新緑に彩られています。

 

先日、東京の根津美術館へ行きました。

尾形光琳の《燕子花図》の屏風を見るために。

根津美術館

六曲一双の、細長い作品よ。

6箇所で、折れ曲がるから、六曲。

2枚の屏風で1セットだから一双。

屏風は、端っこを引っ付けて、折れ曲がる箇所を数えるのよ。

テーマは『伊勢物語』の「八橋(やはし)」です。

こんな話です。

昔、ある男がいました。その男は、京都では自分が人に求められていないと思い、京都にはい、いるまい、東のほうへ、住むべき国を見つけようと出かけました。大勢ではなく、友を一人か二人だけ連れて行くつもりで、そのようにして出かけました。道を知る人もなくて、途中迷いながら進みました。そして、三河国の八橋というところに着きました。そこを八橋というのは、川の流れが、まるで蜘蛛の手のように、八つに分かれており、八つの橋を渡したので、、八橋というのです。その水辺のほとりの木陰に下りて座り、携帯用に、干しておいた飯を食べました。その水辺には、燕子花の花がたいへん楽しげに咲いていました。それを見てある人が「かきつばたという五文字を、歌の句のそれぞれの一文字目に据えて、旅の心を詠め」と言うので、詠んだ歌があります。

 唐衣を着るように、ふだんから慣れ親しんだ妻と別れて、はるばると旅に出て来たことが思われる。

原文:からころも 着つつなれにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ

と詠んだので、皆、干した飯の上に涙を落として、飯がふやけてしまいました。

美術館の庭園には、燕子花が咲いていました。

まるで平安時代に、迷い込んだようでした。