【娘への手紙】画の美しさは基本にある

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白い花を描こうとしているのですが、基本の大切さを痛感します。

私は、胡粉と岩絵具の白を使うのだけれど、胡粉を綺麗に発色させるのは、難しいわ。

今でも、胡粉をお皿に叩きつけながら、学校で習った基礎を、思い出しています。

 

絵の基礎は、5世紀の中国の画論に、学ぶことができます。

謝赫『古画品録』の「画の六法」です。

円山応挙や幸野楳嶺が教えて、私たちにも根付いている画論の基本は、六朝時代に、ほぼ完成しているのですよ。

六法はね、

「気韻生動」

「骨法用筆」

「応物象形」

「髄類賦彩」

「経営配置」

「伝意模写」

と書かれています。

1つずつ、意味があるのだけれど、

「絵の気品を表現するためには、確かな写生をもとに、適切な構図と色彩を使うように」

と言っていると覚えておけばいいわ。

 

とりわけ、絵には色彩が重要なのよ。

「髄類賦彩」とは、モチーフに相応しい色を塗ることです。

ですが、ただ上手に着彩することではないの。

「絵の具の艶が出るように色を施す」という意味ね。

見たままの色を塗っていれば、いいんじゃないのよ。

 

発色の悪い絵は、どんなに構図が優れていても、感動しないわね。

テーマが良くても、同じ。

例えば、美人画ね。

顔の胡粉が、膠で黄色く濁っていたら、最悪だわ。

しかも、溶け残った胡粉の粒が貼り付いていたら、顔の形は美しくても、醜女画ね。

なんて言いながら、私も胡粉の膠が、黄色く輪っかになったり。

これは、早く乾燥させたいときに、室温を上げすぎるからね。 

 

胡粉を塗る基本は、最小限の膠で溶き、上澄みだけを塗って、自然乾燥するのよ。

そうすると、美しく艶のある白になります。

基礎の技術を習得すると、思うものが、自在に描けるようになるのだけれど、忘れているものあるわ。

勉強し直さなきゃ。

【娘への手紙】狩野派の筆さばき

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京都も雪が降りました。

雪見石の上だけ、山茶花の木があるから、雪が積もっていないの。

 

この後で、東京の根津美術館で、狩野派の絵を見ました。

庭園の池が凍りつく寒さの東京に、狩野派の絵は、よく似合うわ。

京都の二条城の、寒い冬の大広間には、狩野派がピッタリだったから。

煌煌とした金と緑青に、太い墨の流線の厳しさは、冬に合うわね。

 

その前の日に、書道を習っていました。

先生の筆の動きが早くて、あっと驚いたわ。

なぜなら、私の描いている日本画は、岩絵具を垂直に置くために、筆を早く動かさないから。

筆で、絵の具を引くのではなくて、置くの。

だから、ゆっくりとした筆の動き。

それを見慣れていたから、驚いた。

1人で制作をしていると、自分以外の人が、どんな早さで筆を動かしているのか、分からないわね。

だから、狩野派の絵師は、どんな筆の動きをしていたのか、想像しながら見ていました。

鳴り物に乗って田楽を踊るように、リズミカルな筆さばきで、描いていたのかしら。

それとも、雅楽に合わせて舞楽を舞うように、ゆるゆると紙の上を滑らせていたのかしら。

動画が残っていないから、永遠の謎ね。

想像していると、絵の中に引き込まれていきそうだわ。

 

【娘への手紙】本物の芸術を子供へ教える

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無事に日本へ帰国してくれて、嬉しいです。

あなたを抱きしめると、あっという間に、お母さんの顔になってしまいますね。

 

芸術の話を、あなたとするのは、本当に楽しいわ。

懸命に、子育てをしたご褒美のようです。

そういえば、あなたには、子供だからと、簡単な話はしませんでしたね。

あなたに理解できる言葉に置き換えて、政治から芸術、ゴシック様式の意味、日本画の特徴などを教えました。

優れたものを子供が理解できないなんて、ないわね。

今は、あなたに、教えてもらう側になったわ。

教えて。

教えられて。

果てしなく繰り返せるほど、世界が豊かで、よかった。

【娘への手紙】自由になるために伝統を学ぶ

周吉と嘉一郎、文治郎、米三郎兄弟

この写真は、木島周吉(父)、嘉一郎(長男)、櫻谷(次男)、桃村(三男)。

全員が、美に関わる仕事をしていたの。

すごいことだと思います。

京都の、老舗呉服店や美術協会が並ぶ、最高の芸術が生まれる環境で、最高の芸術家たちが育ちました。

 

若い頃は、人は自由に生きた方がいい、やりたいことをやるべきと思ったこともありました。

けれど、やるべきことがある生き方も、その中で、さらに大きな自由を得られるのだと知りました。

斬新な技法にチャレンジする前に、伝統的な技法を徹底して学ぶ。

画論に則って描く。

そうすることで、より自由になれます。

闇雲に描いても、絵に「画品」がないのよ。

品性は、時代を超えて残ったものに、宿っているのね。

 

歴史を学ぶことで、いまを自由に生きられるのと同じね

【娘への手紙】美と縁を結べる人

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ニューヨーク・バレエ団のチケットを入手できて、良かったわね。

バランシンの「くるみ割り人形」、最高ですね。

しかも、サイトでチェックすると、残りはあと1枚。

「観に行っちゃおう!」

その場で、すぐに購入したあなたは、この先に、大きな成功を成功を掴むでしょう。

美は、瞬間のものです。

縁なのです。

どんなに見たいと願っても、見ることの出来ない作品もあります。

美との縁を、パッと反射的に掴める人は、ほかの大切な縁も、逃しません。

 

私のクリスマスは、東京へ勉強しに行きます。

セミナーを受けて、美術館を回ります。

例年通り、お友達と、クリスマス・ディナーを楽しもうかとも思ったのですが、今年は一番好きなことをします。

自分への、クリスマス・プレゼントです。

あなたも、勉強が好きで、隠れて勉強していましたね。

「朝からドリルをして、ごめんなさい」と、謝っていました。

勉強が楽しくて、遊びだと思っていたのですよね。

勉強がよく出来る子は、勉強が、三度のご飯よりも好きなのです。

 

絵が好きな人も、つい描いてしまうのです。

つい、美術館で時間を費やしてしまうのです。

美と縁を結ぶ人たちは、とても自然に、いつの間にか、美と共に生きています。

 

【娘への手紙】アートの知識がなければ、損をしてしまう理由。

 

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これはあなたが、友達とニューヨークに遊びに行った時の写真ね。

美術館も博物館もたくさんある場所に住んでいるのは、羨ましいわ。

人は、どこに住むかで、人生が決まると思うから。

特に若い間は、文化の栄えている場所で暮らした方がいいですね。

成功のチャンスも、ヒントも、若い間に見つける練習をしなければ。

成功への反射神経は、訓練で身に付けられます。

 

京都も文化の街だけれど、ぼんやりしていると、見逃すものがたくさんあるのよ。

「ぼんやり」は、知識がない状態のこと。

知らないことは、見えません。

先日、友達の料亭に、ご飯を食べに行きました。

床の間には、明治時代の日本画の大家・橋本雅邦の、とても可愛らしい掛軸がありました。

しかも、12代柿右衛門の器に、料理が盛ってありました。

大興奮でしたよ。

目が肥えている人には、とても興味深い街です。

橋本雅邦も、柿右衛門も知らない人もいますね。

同じお金を払っても、楽しめる内容が違うのです。

それは、勿体ないですね。

 

あなたが豊かに生きるためには、お金だけでは、無理なのです。

豊かな知識があって、初めて本物の豊かな人生が叶います。

そういう経験を、これまでしたことがありますか?

あなたの気づきを、聞かせてくださいね。

【娘への手紙】大阪に及んだ京都画壇の影響力

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そちらは、もう寒いですか?

紅葉がきれいね。

いつも思うのです。

こんな美しい場所で毎日勉強していたら、魂まで、美しく磨かれそうです。

「どこで」で勉強をするのか。

決して、疎かにしてはいけない問題だと思うの。

学ぶ場所ほど、最高級の場所が良いと感じます。

 

私は先日、東京の根津美術館で、光村利藻の刀装具の展覧会を見ました。

明治時代に集められたものです。

明治の、京都画壇の重鎮で、画学校の創設に尽力した幸野楳嶺と親交があり、その門下生の竹内栖鳳がデザインした刀も展示してありました。

栖鳳の刀が見れるなんて。

珍しくて、驚きました。

最近、大阪、東京、京都と、3都市をうろうろしています。

おかげで、京都を見る目が変わりましたよ。

なんて嫋やかな作りの街なんだろうと、京都の街の「繊細さ」を、日々意識するようになりました。

柱の作りなんて、細くて、細やかで、人形の家みたい。

おままごとの家に住んでいるような感じです。