【教育】愛の種を撒く

子育ては、種まきの時期が長いのです。

すぐには花開かない種を、子供が小さな頃から、心の中に植えていきます。

ひとつ、ひとつ、毎日。

いくつ撒いても、花が開かないように見えることも、ありますね。

反抗期には、育て方を間違ってしまったような気になります。

それでも、その時期が来れば、必ず花開きます。

愛の花です。

自分を愛し、人を愛することで開く花です。

愛に満たされた大人に育てることが、親の、最大の仕事だと感じます。

【教育】親が心配を先取りしない

子供の未来を、親が先取りして心配しないように、気をつけていました。

娘が「アメリカへ留学したい」と言い出したときに、危ない国だよと、心配してくれた人たちがいました。

愛情からの反対だったので、嬉しかったです。

ですが娘へは、「気にしないでいいよ」と伝えました。

親が思う以上に、子供は、自分の未来を見通していると感じます。

親のことも、よく分かっています。

その上で、自分のやりたいことを言っているのですから、しなくていい心配は、する必要ないですね。

【娘への手紙】時間が描く絵画

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これは、京都の東寺で撮った、古くなった扉の一部です。

色々なものが、ぶつかって出来た傷が、美しいわね。

まるで抽象絵画のよう。

風化したものが、どうして美しく見えるのかしら。

これから先も、この扉は、傷を増やしていくのでしょうね。

進化する、自然の絵画みたい。

 

 

芸術の面白いところは、正確には、永遠に完成しないことかもしれません。

どんな作品も、物質として表現されている限り、劣化、風化していく運命にあります。

日本画の場合は、10年も経たない間に、紫外線による変色で、描き上がった時とは、雰囲気が変わります。

でも「変化していい」と感じる心を持っている人が多いのよ。

よく考えると不思議ね。

日本の四季の移り変わりや、生死観に、関係するのかしら。

変化を愛する人は、その瞬間、瞬間の存在を、愛している感じがするわ。

今、ここにあるものに集中できるからこそ、変化も受け入れられる。

有限と無限は、矛盾しないのね。

【娘への手紙】画の美しさは基本にある

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白い花を描こうとしているのですが、基本の大切さを痛感します。

私は、胡粉と岩絵具の白を使うのだけれど、胡粉を綺麗に発色させるのは、難しいわ。

今でも、胡粉をお皿に叩きつけながら、学校で習った基礎を、思い出しています。

 

絵の基礎は、5世紀の中国の画論に、学ぶことができます。

謝赫『古画品録』の「画の六法」です。

円山応挙や幸野楳嶺が教えて、私たちにも根付いている画論の基本は、六朝時代に、ほぼ完成しているのですよ。

六法はね、

「気韻生動」

「骨法用筆」

「応物象形」

「髄類賦彩」

「経営配置」

「伝意模写」

と書かれています。

1つずつ、意味があるのだけれど、

「絵の気品を表現するためには、確かな写生をもとに、適切な構図と色彩を使うように」

と言っていると覚えておけばいいわ。

 

とりわけ、絵には色彩が重要なのよ。

「髄類賦彩」とは、モチーフに相応しい色を塗ることです。

ですが、ただ上手に着彩することではないの。

「絵の具の艶が出るように色を施す」という意味ね。

見たままの色を塗っていれば、いいんじゃないのよ。

 

発色の悪い絵は、どんなに構図が優れていても、感動しないわね。

テーマが良くても、同じ。

例えば、美人画ね。

顔の胡粉が、膠で黄色く濁っていたら、最悪だわ。

しかも、溶け残った胡粉の粒が貼り付いていたら、顔の形は美しくても、醜女画ね。

なんて言いながら、私も胡粉の膠が、黄色く輪っかになったり。

これは、早く乾燥させたいときに、室温を上げすぎるからね。 

 

胡粉を塗る基本は、最小限の膠で溶き、上澄みだけを塗って、自然乾燥するのよ。

そうすると、美しく艶のある白になります。

基礎の技術を習得すると、思うものが、自在に描けるようになるのだけれど、忘れているものあるわ。

勉強し直さなきゃ。

【娘への手紙】狩野派の筆さばき

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京都も雪が降りました。

雪見石の上だけ、山茶花の木があるから、雪が積もっていないの。

 

この後で、東京の根津美術館で、狩野派の絵を見ました。

庭園の池が凍りつく寒さの東京に、狩野派の絵は、よく似合うわ。

京都の二条城の、寒い冬の大広間には、狩野派がピッタリだったから。

煌煌とした金と緑青に、太い墨の流線の厳しさは、冬に合うわね。

 

その前の日に、書道を習っていました。

先生の筆の動きが早くて、あっと驚いたわ。

なぜなら、私の描いている日本画は、岩絵具を垂直に置くために、筆を早く動かさないから。

筆で、絵の具を引くのではなくて、置くの。

だから、ゆっくりとした筆の動き。

それを見慣れていたから、驚いた。

1人で制作をしていると、自分以外の人が、どんな早さで筆を動かしているのか、分からないわね。

だから、狩野派の絵師は、どんな筆の動きをしていたのか、想像しながら見ていました。

鳴り物に乗って田楽を踊るように、リズミカルな筆さばきで、描いていたのかしら。

それとも、雅楽に合わせて舞楽を舞うように、ゆるゆると紙の上を滑らせていたのかしら。

動画が残っていないから、永遠の謎ね。

想像していると、絵の中に引き込まれていきそうだわ。

 

【娘への手紙】本物の芸術を子供へ教える

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無事に日本へ帰国してくれて、嬉しいです。

あなたを抱きしめると、あっという間に、お母さんの顔になってしまいますね。

 

芸術の話を、あなたとするのは、本当に楽しいわ。

懸命に、子育てをしたご褒美のようです。

そういえば、あなたには、子供だからと、簡単な話はしませんでしたね。

あなたに理解できる言葉に置き換えて、政治から芸術、ゴシック様式の意味、日本画の特徴などを教えました。

優れたものを子供が理解できないなんて、ないわね。

今は、あなたに、教えてもらう側になったわ。

教えて。

教えられて。

果てしなく繰り返せるほど、世界が豊かで、よかった。

【娘への手紙】自由になるために伝統を学ぶ

周吉と嘉一郎、文治郎、米三郎兄弟

この写真は、木島周吉(父)、嘉一郎(長男)、櫻谷(次男)、桃村(三男)。

全員が、美に関わる仕事をしていたの。

すごいことだと思います。

京都の、老舗呉服店や美術協会が並ぶ、最高の芸術が生まれる環境で、最高の芸術家たちが育ちました。

 

若い頃は、人は自由に生きた方がいい、やりたいことをやるべきと思ったこともありました。

けれど、やるべきことがある生き方も、その中で、さらに大きな自由を得られるのだと知りました。

斬新な技法にチャレンジする前に、伝統的な技法を徹底して学ぶ。

画論に則って描く。

そうすることで、より自由になれます。

闇雲に描いても、絵に「画品」がないのよ。

品性は、時代を超えて残ったものに、宿っているのね。

 

歴史を学ぶことで、いまを自由に生きられるのと同じね